シャドーワークと住まいの質
住まいが備えるべき質といえば、構造の安定性、耐久性、快適性(音、空気質、温熱、光など)、保守性(維持管理、保守点検)、環境に対する配慮(素材、リユース)があげられる、さらに経済性も備えるべき質といえるかもしれない。
それと共に、作り手:職人(このブログでは作り手は職人のことを指す)の存在をも忘れてはならい、職人は質を決定づける最大の要因といって言いと思っている。
戦後の住宅産業界を俯瞰すると、日本経済は内需と外需の両輪をシャフトが折れるほどに回転させた結果、アメリカに次ぐ世界第二位の経済大国になった。
内需拡大の原動力となったのは、景気浮揚政策のど真ん中に位置付けられた住宅産業界であった、住宅産業界は工期短縮、コストダウン、省力化の推進により生産拡大、大量消費を促し、1990年には年間住宅着工件数は170万戸と拡大した。
しかしその影では、なるべく手間と行程を省き、ワンタッチで組み立てができる工法と職人を企業の下請けに組み込むことで、あれほど高い技術水準を誇っていた職人文化(仕事に取り組む姿勢、感覚と判断力が導き出す技、フェアな精神)を生かそうとしなかった、そしてその軽視した職人文化の最たるものがシャドーワークである。
住まいにおける職人のシャドーワークは、一種のスクリーニング(ふるいにかける)でもある、職人は身(経験と感覚に裏打ちされた判断力)を削って住まい手に安心な住まいを提供する役割を果たしていた。
前回のブログで、日本品質=シャドウワーク=「中身を磨く」「一手間を惜しまない」=長期的信頼関係の醸成と定義したが、年間住宅着工件数は170万戸の繁栄は、熟達した職人・技術・精神を生かそうとしなかったため、安全弁を無してしまったとも言える。
「用即美」という造語をつくり、日本の職人技術と文化の健全性、力強さ、完全性を強調したのは民芸運動を起こした思想家にして美学者の柳宗悦(やなぎむねよし)である。
「用即美」とは「丈夫で長持ち、そして美しい」さまをいい、建築では構造と意匠の統一のことで、合理的で木の特性に素直に従えば、力の流れを可視化した力強い、合理的で美しい架構を組むことができる、合理的で美しいから長持ちをするのである。
シャドーワークは、住まいの構造安定性、耐久性、快適性、保守性に計り知れないプラスを与えるだろう、日本品質とは何かをもう一度確認したいものだ。
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