「能はこんなに面白い」 その一  

「石橋(シャッキョウ)」(*1)はドラマチックな能だ、古代中国の唐土清涼山の石橋を舞台に、前場と後場が劇的に変わる演出に、ヨシコとクニオの二人は心をわしづかみにされた。いや正確にはクニオはわしづかみにされ、ヨシコは少々納得のいかない面持ちだ。

能「石橋」前場

「出家して寂昭法師と名乗る大江定基は、清涼山の文殊浄土に係る石橋の基に着く、そこに現れた樵童(しょうどう)は、石橋を渡ろうとする寂昭法師を止め、渡る事の困難さを示し暫くここで待てと告げて去っていく」

 


ヨシコ 

“前場と後場では演出がガラッと変わるのね”

クニオ

“いかにも眠気を誘う前場!”

ヨシコ

“あくびを押し殺すのが大変だったわよ”

クニオ

“僕も でも、地謡の心地良さに包まれて、ついっていう感覚だけど”

ヨシコ

“??・・・”

クニオ

“ほれ声明だよ、地謡方の微妙な呼吸と謡の重なり合いがね 声明のように響き、なんとも心地よく感じなかった?”

ヨシコ

“そういえば ウーン  ゆりかごでまどろむような ”

 二人にとって地謡方とのシンクロは、能の魅力の新しい発見だった。

 宗教学者の山折哲雄氏は、石橋を観た時、即座に二河白道図をイメージしたと言っている(*2)、二河白道図とは浄土信仰に基づく宗教画である。

 二河白道は中国古代の善導が極楽往生を進める比喩として発想されたようだ。二河とは火の川(怒り)と水の河(貪欲)のこと、二河の間に白い道が通っている、道をたどれば浄土・極楽に達する、その白い道は深い信仰心を持つ者の前に一筋の道筋が現れる  と信じられていた。

ヨシコ

“でも、能って写実的でないから、石橋の両側が懸崖で地獄のような深い谷に渡された橋だなんてイメージできないわね”

クニオ

“能の舞台は省略に省略を重ねて極めて簡素、演技も具象性を排除して限りなくシンプルだからね”    

ヨシコ

“それでイメージしろなんておかしくない”

クニオ

“そこ々、その間を想像力で埋めろと言われているよね”

ヨシコ

“想像力で完成させる?“

省略し余白をつくる事、表現し尽くさず、何も描かれていない余白を作者と鑑賞者が想像力の限りを尽くして完成させる、 能が省略を美とする演劇と言われる所以である(*3)

クニオ

“そこが能の奥深いところだよ  きっと   ここにはまるんだよネ!”

ヨシコ

“まー 二河白道を知ってたら、よりリアルに浮かぶかも”

クニオ

“山折氏は「石橋は二河白道のイメージに導かれて創作されたのではないかとさえ思う」とも言ってるね”


ワキ「謂はれを聞けばありがたや。ただ世の常乃行人ハ。左右なう渡らぬ橋よなう」

シテ「御覧候へ、この瀧波乃。雲より落ちて、数千丈。瀧壺までハ、霧深うして。身の毛もよだつ、谷深み」

カカル ワキ「巌峨々たる岩石に」

シテ「僅かに懸る石の橋」 

ワキ「苔ハ滑りて足もたまらず」

シテ「わたれば目も眩れ」

と謡い上げられた時、見所の僕らは石橋の両側は深い谷にえぐられ、奈落の底は霧の中、懸崖で地獄のような深い谷の光景がイメージできるのだ。

とても人力では渡る事ができない、仏力を得たものだけに許される…………。


クニオ

“ここでお茶しましょうか?”

ヨシコ

“そうね、お茶にしましょう”
ヨシコ・クニオ

“前場の「序」から後場の「急」へ(*4)、 連獅子が登場しますご期待くださいね。“

                                                  To be continued

(*1) グランシップ静岡能で上演 石橋の他に能:鶴亀、狂言:佐渡狐

(*2)「能を考える」 中公業書  山折哲雄

(*3)「能はこんなに面白い」 小学館 観世清和・内田樹  表題もこの書名をいただきました。

(*4)「序・破・急」 the能com(the能ドットコム:入門・能の世界:能の歴史 (the-noh.com)

序破急は能・狂言の演出理論のひとつで、構成・演出・速度などを3段階に分けた考え方。雅楽にある語を取り入れたと言われ、能の大成期にはすでに用いられていた。

 序は導入の静かな部分、ゆっくりとした拍子にはまらない部分、破は中心となる展開部、急は終局に向けた部分というように分けられている。

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