森と一緒に…

森からいただく恵みの“木”や“土”を使って作ります

縄文や弥生時代、日本列島は緑に覆われた列島でした。

私たちの祖先は森から得られる恵み(木)を活かして、登呂遺跡にみられる棟木(むねき)をサスと呼ばれる垂木で組んだ竪穴住居を建て、命を暮らしを育んできました。

先に、「地球は子供たちから借りている」という諺を紹介しましたが、今度は祖先が見守っているという話をします。

●木編

炭素循環をご存じでしょうか?

私たち人間もこの炭素循環の中にあります。

体重50㎏の人の人体には、炭素原子が750×6.02×10の23乗個(*1)存在します。

人が人生を終えて火葬にされると、CO2となって空中に放散し、その時CO2は、1ℓの空気中に86,000個が存在する濃度だそうです。

わたしたちの祖父や祖母の体を構成していたCO2が、日本のそこここの空気中に祖父・祖母由来の炭素が86,000個/1ℓ(の空気)存在するということです。

さらに、長い年月に植物の光合成により吸収され、樹木(炭素)や穀物(炭素)になり、穀物(炭素)は動物に取り込まれて動物(炭素)になります。

一方、私たちの近くの山では、光合成により、祖父・祖母由来のCO2を取り込んで立派に育っている木々が存在しています。

そんな「木」で建てた住まいでこそ、安寧な心落ち着く生活ができるのではないでしょうか?

なぜなら木の中のご先祖が見守っていてくれるから・・・近くの木で家を建てることをお勧めします。

(*1) 炭素の原子番号は12、よって12gで1アボガドロ数個(6.02×1023乗個)の炭素原子が存在します。 
 人は体重の約18%が炭素です、だから体重50㎏の人は、50㎏×0.18=9㎏の炭素が体内に存在し、9000g/12g=750だから、炭素原子が750×6.02×10の23乗個存在します。

●土編

民家をかたちづくる素材で、木と共に「土」を忘れるわけにはいかないでしょう。

土壁と暮らしの接点を詠んだ芭蕉の2句を詠んでみます。

夏 「ひやひやと 壁をふまえて 昼寝かな 芭蕉」
冬 「 埋火うずみびや 壁には客の 影法師 芭蕉」

「ひやひやと壁をふまえて昼寝かな」からは、夏でも冷気を蓄えた土壁の気持ちよさが、足を通して感じられ、

「 埋火や壁には客の影法師」では、 囲炉裏を囲み、暖をとる主人と客、炭火の明かりが土壁に映し出す影に、土壁のほのかな暖かさ感じさせます。

さらに民家で忘れてはならない景色があります。

土間のある景色です。

土でつくる三和土たたきの土間は農家だけでなく町屋にも多くみられ、仕事場として生業なりわいの場として、暮らし中に濃密な空間を創り出しました。

土はずっと我々の暮らしと寄り添ってきました。

それからいろいろと学びました。

火に強いこと…

湿気を調整してくれること…

熱を蓄え適度に放出してくれる(夏は蓄冷、冬は蓄熱)こと…

複雑な形態に追随できること…

文字通り土に還ること…などなど。

土は、暖かいような・冷たいような、硬いような・柔らかいような、そんな両義性りょうぎせいをもつからおもしろい。

職人と一緒に…

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現代版 “ゆい” ~ パートナーシップ

奈良の三輪山みわやま山麓にある、邪馬台国の卑弥呼の墓と目される箸墓古墳はしはかこふんは、「昼は人が作り、夜は神が作る」と日本書紀にあります。

この記述は、古代の地域共同体による家づくりを表し、民による町づくり国づくりの原点だとも言われています。

民家の家づくりでは、民家の下部構造(桁より下の部分)は、とび職人、左官さかん建具屋たてぐや経師きょうじ板金ばんきんの各職人が腕を振るい、全体の差配さはいをした職人は棟梁とうりょうと呼ばれた大工でした。

それに対して、上部構造(けた (= 建物の柱の上に棟の方向に渡して、ささえとする材木)より上の小屋組や屋根)は地域の共同作業でつくられて維持されました。

この助け合い、協力し合う相互扶助は「い」とも「もやい」とも呼ばれていました。

い」は多大な労力を要する際におこなう共同作業でした。

 一軒の住宅を建てる時、住まい手(建築主)と設計者、さらに15~20職種の職人たちの協力体制が不可欠です。

職人達との関係を含め、現代の家づくりの方式と、わたしたちが提案する「現代版 “ゆい”」による家づくりの方式について見ていきましょう。

一般的な家づくり = 一括請負方式 の弊害

現代の家づくりの現場では一括請負体制(*2)が主流です。

この方式だと、施主は元請けである工務店やハウスメーカーと契約し、家づくりが始まります。

工事は、元請け・下請けという上下関係の中で進み、契約書の金額範囲で設計図書(*3)に記載された品質の住宅を完成させて終了です。

もちろん地場の工務店のように、工事、技術、完成後の維持管理まで、全面的に信頼できる工務店は多数存在します。

しかし、多くの場合、住まい手と実際に作業する職人との関係は希薄で、例えばハウスメーカーでは、住まい手が職人にお茶を出すことさえ好まれないと聞きます。

(*2)製品としての住まいをつくる、提供するという行為を一括して第三者が請け負う方式。この第三者を元請けと呼び、工務店やハウスメーカーがそれにあたります。
事業費や工期、完成品の品質など一切の責任は請け負った側にあります。

世界的に見ればかなり特殊な方式

(*3)仕様書、図面、工事予算書

現代版 “ゆい”(パートナーシップ)」による方式

時ノ寿 ときのす/ 木組みの家」が行っているのは、現代版「い」による方式。

この方式は一般的には、

1)施主が自力で材料を集め、作業を行う。
2)自力では限界のある作業をプロに任せる。

という方法です。

ただし、この方式を住まい手が自分で行おうとすれば、膨大な時間と労力が必要であるため、大多数の方には困難です。

一方、一括請負方式に比べ見える化と信頼の醸成と云いう点で、住まい手 にとっては明確であるため、「時ノ寿 ときのす/ 木組みの家」では、この方式を採用しています。

・・・

各種の契約は、職種ごと各職方と行います。

工事を進める上で、住まい手・設計者・職人は並列で上下関係になく、互いに感謝し、互いの公正(フェアネス)さを基本とします。

この精神が良質な住まいをつくりあげるエネルギーの源なのだからです。

「現代版 “結”」は、住まい手・職人・設計者が互いに”依頼する依頼されている、信頼する信頼されているんだ”という意識が醸成され、良質な住宅をつくるという目標を共有する強力なチームになるでしょう。

 この方式を採用する“理由”は以下の点にあります。

□ 見えるようにする

 一括請負方式ではどうしても見えにくい「お金の流れ、材料の質、作業工程、職人の顔」を見えるようにする

□ 信頼と納得を得ることができる

   一括請負方式ではどうしても希薄になりがちな三者のつながりを強固にする

 1)住まい手…家づくりの過程で築かれた信頼関係が、質の高い住まいをつくる最高の保証と心得る。

 2)職人…目標を共有する、技量を高める努力、時間と手間を惜しまない。

 3)設計者…構造の安定、材料の安全性、快適性な住まいの設計を行う。

職人と仲良くなると、住まいの質が上がる

住まい手の喜ぶ声を聞けた時…「この仕事をやっていてよかったなと思う。」

この職人さんならこれだけの仕事をしてくれるという信頼と、それに応えようと頑張る職人…それは顔の見える関係だからこそ生まれます。

大工の工法のことや、左官のことを直接聞ける…

使用する材料を直接、見て、触れて確認できる…

材料の産地や、安全性を話題に一緒にお茶を飲む…

職人の加工場で搬入前の仕事ぶりを見る…

…このようにして住まい手が職人と直接口のきける関係ができ、気心の知れる関係ができあがれば、住まいの質は確実に上がります。

家が完成した時、それを実感していただくことができるでしょう。

2000年に制定された品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)では、住宅の品質や性能が約束されたものと異なり、欠陥があった場合、その損害を保証する「瑕疵担保かしたんぽ制度」が導入されました。

しかし、瑕疵担保保険と持ち上げても、たかだか10年保証であり、最低30年~50年と家を持たせる中で考えると短すぎます。
保証書を仲立ちとした、冷たい関係でしかないように思えてなりません。

それより具合が悪くなったすぐに連絡でき、ずっとサポートしていく関係ができたほうがずっと建設的だと思いませんか。

住まいの完成は“終わり”でなく、ずっと続く関係の“始まり”です。

家を造る過程で築かれた信頼関係が、最高の保証です。

だから、職人達と友達になり、完成時には喜びを分かち合いませんか。

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あなたと一緒に

あなたが主役の家づくり

住まいが、住まい手(建築主・施主)の手から離れて久しい…

かつて家づくりは、「い」と呼ばれる共同作業で行われていました。

例えば、建前、屋根葺き、荒壁掻けなど短時間に労働力を必要とする時、、親戚や組内から応援を頼む、相互扶助の慣行があったことよく知られています。

戦後、「ゆい」は衰退し、住まいの建設は外部化され、業者が請け負ったり、工業製品化で対応したりするようになり、住まいづくりは、よくわからないブラックボックスと化してしまいました。

間取りを決め、契約書に判を押し、キッチンなどの住宅設備機器や材料をカタログから選ぶ…。そして3ヶ月も経てば出来上がり。引き渡しを受けて、これが我が家かと感慨にふけることができでしょうか。

あなたが主役の家づくりとは、間取りを決め、契約書に判を押すだけでなく、住まい手自ら家づくりに手間を掛けることで、家づくりの記憶を豊かなものにしようという仕組みです。 

現場で一緒に作業することで、同じ釜の飯を食べたような、あの連帯感が生まれます。

手応えと実感を得にくい今の世の中…シンプルな作業だけど、その奥行きは計り知れない、家づくりという作業。

日々、家が出来上がっていく中で感じられる“成果”と、家が出来ていくプロセスも良くわかります。

そして、完成の暁には「人のチカラってすごいな」と、晴れがましさを感じていただけること、間違いありません。

他に無い、「住まい手が参加する家づくり」を選んでみませんか?

□住まい手参加のメニュー (一例)

◎内外部の木部塗装

◎竹小舞掻き(荒壁下地)と割竹つくり

◎荒壁(土)掻け

◎焼き杉つくり

◎三和土の叩き 

◎現場の掃除

◎子供大工教室

◎土の泥団子つくり

◎現場の掃除

ずっと一緒に…

家守り、環境を守るための“家づくり”

設計・工事監理業務のミスが原因で発生した時、その損害に伴う賠償責任をカバーする保険制度に建築賠償保険があります。

準備に十分な時間を掛け、綿密な計画に基づいて設計図書が作成され、その意図するところを忠実に反映した施工が行われれば、事故など起こるはずなどありません。

しかし、結果的には必ずしもそうでもなく、多くの事故は起こるべくして起こる場合が多いのです。

事故が起これば、設計者ばかりか発注者である住まい手も大きな心労に見まわれ、一瞬にして信頼関係の糸は切れてしまいます。

そして起こった事故の損害を少しでもカバーしてくれる建築賠償保険は、設計者ばかりか住まい手にも事故のおける心労の軽減を果たしてくれるはずです。

そういう意味で、建賠保険への加入は設計事務所のマナーと言えるでしょう。

SDGsという言葉を最近よく耳にします、SDGsとは、「持続可能な開発ための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。

17 のゴールと169のターゲットから構成され、誰も取り残さない(No one left behind)ことを誓っています。

もちろん、“家づくりも”その目標を掲げて進むことは重要な課題です。

私たちは社会貢献の視点を持たない“家づくり”は成立しないという思いを持ち、「時ノ寿 木組みの家」という家づくりを提案しております。

「 楽も苦も 時過ぎぬれば  跡もし世に残る名を 他だ思うべし」(*4)

(*4)人生の中では楽しいことも苦しいこともたくさんあるが、それらは永久的ではなく、その時だけのものである。しかし、名は永遠に残る。子孫のためにも、よい名を残すように努めなければならないと歌われています。